飲食店開業・小さいお店の始め方

飲食店経営を続ける難しさ!資金繰りに銀行融資で運転資金借入すると

「将来の夢は脱サラして、ラーメン屋や蕎麦屋やカフェをやる」そんな夢を持っているサラリーマンの方も多いのではないでしょうか?
飲食店は参入障壁が非常に低い業種です。
調理師免許がなくても保健所の講習を受けるだけで、営業許可を得ることができますし、ラーメン屋やそば屋を成功している人の多くがもともとは飲食とは関係のない業種の人出身です。
また、ラーメン屋や蕎麦屋やカフェを経営するために特別な技術は必要ありません。
しかし、安易に成功だけを夢見て飲食店経営に手を出すのは非常に危険ですし、現実として飲食店はあらゆる業種の中で最も新規参入が多く、徹底が早い業種です。
2年以内に新規出店店舗の約半分が店舗を閉鎖していると言われています。
私たちの中で最も身近な業界とも言える飲食店ですが、成功のノウハウを知らずに「ノリ」や「夢」だけで出店し、失敗している人が数多くいます。
この記事では、飲食店経営の実態、失敗しない秘訣、資金繰りのノウハウなどについて徹底解説を行っていきます。

飲食店は儲からない?

結論から言えば、飲食店は簡単には儲かりません。
むしろ、開業から数年は黒字を期待して生活設計を立てることは無計画と言わざるを得ません。
あらゆる業種は開業前に「どこに販売を予定し」「いくらの売り上げが見込めるか」という見込みの上に開業します。
売り上げが見込み通りにいかない場合には営業に行くこともできます。
しかし、飲食店の見込みは不特定多数の顧客のみで、多くの人が事前にマーケティングを行って売上の見込みと立てているわけではなく、根拠のない希望的観測によって開業しているためです。
また、飲食店の営業は「広告費」ということになるのでしょうが、広告費は莫大です。
ほかの業種が営業をかける際には、交通費や食事代くらいしかかからないのかもしれませんが、飲食店は営業を行うことそのものにもお金がかかってしまいます。
さらに飲食店には、脱サラして他の業種では必ずしもかからない以下の経費が必ず必要になってしまいます。

家賃

自宅を改装して店舗でも始めない限りは必ず家賃が発生します。
また、筆者の経験上、飲食店の売り上げの半分は場所で決定します。
条件のより良い立地の物件を借りようと思えば必ず家賃が高くなります。
理想的な家賃構成比は売上の1割と言われており、家賃20万円の物件を借りたとしたら、毎月200万円を売り上げなければなりません。
月25日の営業で1日80,000円の売り上げです。
1杯800円のラーメンで言えば1日100杯を売り上げなければならない計算になり、1日100杯の売り上げというのは地元でも超人気店のレベルですので、脱サラしてこの売り上げに1日で到達するのはほとんど不可能です。

人件費

飲食店のデメリットとしては「1人では営業できない」という点にあります。
立ち食い蕎麦屋でもない限りは必ず、厨房に1人〜2人必要になり、ホールにも人が必要になります。
他の業種であれば、営業から生産まで1人からスタートすることができますが、飲食店はこれがほぼ不可能なのです。
特に最初は理想的な店舗を作るために人を多く雇いがちですが、このために飲食店の撤退サイクルが早い原因ともなるのです。

初期投資

また、味と同じくらいに飲食店の顧客が重視するのは店の雰囲気です。
顧客はおしゃれな店で美味いものを食べたいと考えるものです。
さらに厨房器具も必要になります。
これらの投資には500万円〜1000万円程度のお金が平均的には必要になります。
このお金も飲食店だからこそ必要になるお金で、例えばITのベンチャーであればパソコンがあれば起業できることとは開業時に必要な金額の規模が全く異なります。

このように、飲食店の開業には他の業種では必ずしも必要ない経費が多くかかりすぎるのです。

 

日銭が入るから資金繰りは楽なはずだが

飲食店は毎日顧客から現金での売上があります。
これは、他の業種にはない特徴で、飲食店とサービス業だけの特権とも言えます。
では、なぜ日銭が入る飲食店は経営が大変になるのでしょうか?

資金ギャップは生じない

資金ギャップとは、仕入れ代金の支払いから売上金の入金になるまでの資金の時間的なズレのことです。
例えば、100万円の仕入れを行い、仕入れた商品を150万円で売った場合、通常の業種であれば150万円の売り上げが入金となるのは1ヶ月とか2ヶ月先になります。
このため、150万円の売上が入金となるまでの必要な資金は手元に持っておく必要があります。
しかし、飲食店の場合には売上即現金ですので、このような資金ギャップは生じない業種です。
このため、順調に売上が推移している業種であれば資金ギャップを気にすることなく、支払いを行うことができ、手元に現金がどんどん貯まっていくという好循環も簡単に作ることができるのです。

営業黒字ベースにのせるのが難しい

ではなぜ、飲食店の多くが開業から間も無くで撤退しているかと言えば、単純に黒字にならないためです。
家賃20万円、人件費30万円、変動比率(仕入れや光熱費など)30%の店舗の損益分岐点を計算してみましょう。
X=0.3X+20万円+30万円
ですので、X=約72万円
この店舗毎月72万円の売上がないと営業赤字になってしまいます。
いくら日銭が入るといっても、毎月の売り上げが72万円以上ないと、現金が枯渇してしまうということになるのです。
つまり、飲食店が儲からない理由は単純に損益分岐点に売り上げが達しないからです。

運転資金を借りてしまったらより苦しくなる

飲食店は最も運転資金を借りることが難しい業種です。
なぜならば、運転資金とは、支払いと売り上げの現金の時間的なズレである資金ギャップを埋めるための融資であるためです。
そもそも資金ギャップが生じない飲食店では、本来運転資金を融資する必要性が全くない業種であるため、運転資金の融資を受けにくいとされています。
逆に言えば、運転資金の融資を飲食店が必要としている場合というのは赤字を埋めるためという理由以外にはありえず、再建の見込みがない赤字を補填するための融資は運転資金融資の中でも最も審査に通りにくい融資の1つです。
しかし銀行から初めて融資を受けるような場合には飲食店が赤字を埋めるためであっても融資を受けることができます。
銀行も信用保証協会も「新規先」というノルマを抱えているため、新規融資先であればたとえ飲食店の赤字補填費用であっても、なんだかんだと理由をつけて運転資金融資を実行してしまうのです。
借りた直後は店舗経営は確かに楽になります。
しかし、飲食店で赤字を解消できる見込みが立てることができる人などどれだけいるのでしょうか?
通常は、融資金が枯渇した段階で経営はさらに大変になります。
毎月5万円返済が加わった状態で上記の損益分岐点を計算してみましょう。
X=0.3X+20万円+30万円+5万円
X=78.5万円です。
ただでさえ赤字なのに、ここからさらに売り上げを伸ばさなければ今度は借金の返済ができなくなります。
こうなってしまうと、経営の維持は困難になる上に、大家のために仕事をしているのか、従業員のために仕事をしているのか、銀行のために仕事をしているのかが分からない悪循環に陥ることになり、体も精神も疲弊し、店舗を閉じてしまうという人が多くなるのです。

 

飲食店を潰さないために必要なこと

飲食店は日銭が入る業種ですので、下記2つの条件を満たしている人であれば簡単にそれなりの生活を送ることができます。
①家賃が発生しない
②従業員を雇わない
この2つの条件を満たしていれば必要になるのは変動費だけです。
変動費3割であれば売り上げの7割は全て自分の手元に残るため、たとえ毎月の売り上げが30万円しかなくても21万円は生活費に充てることができます。
つまり、自宅で家族経営の飲食店は逆に潰れないのです。
しかし、脱サラして開業する人は必ずしもこのような人ばかりではありません。
上記2つを満たしていない人が飲食店を潰さないためにはどうすればよいのでしょうか?

開業資金は自己資金で

開業時には高額な設備投資や保証金の支払いなどで500万円〜1000万円近くのお金が必要になります。
このお金を全て借入に頼ってしまうと、仮に1000万円を5年返済とした場合には毎月の返済は約17万円、10年返済でも毎月8万円以上の返済が生じてしまいます。
先ほど述べたように、ただでさえ損益分岐点にのせるのが大変な飲食店ですので、ここにさらに8万円〜17万円の返済が毎月生じてしまったら経営は困難を極めます。
銀行からお金を借りにくい飲食業であっても、開業資金だけは比較的簡単に融資を受けることができますが、将来の売り上げ予測が極めて不透明な飲食業でこれだけの借金を最初から背負ってしまうことはリスクが高すぎます。
筆者が経営する店舗の近くで半年前にオープンした飲食店は内装や厨房機器にこだわりにこだわって、初期投資で5000万円借金しました。
何年返済かはわかりませんが、仮に10年返済だとしても、毎月約42万円の返済です。
結局開業から半年で閉店し、オーナーは自己破産したということです。
このようなことにならないために、お金を貯めて、できる限り自己資金で開業資金をまかない、借金返済による固定費の負担を小さくする必要があります。
後述しますが、飲食店は最初の2〜3年が最も経営が大変です。
固定費が多すぎると4年目からの経営が安定する時期までに体力が持たないということになり兼ねませんし、実際のところ多くの飲食店が短期間で撤退しています。

できれば自己物件で

先ほど述べたように、できれば自宅を改装して店舗にするような自己物件の方が望ましいと言えます。
競売物件に出ているようなビルを購入するのも1つの方法でしょう。
金銭的に楽になることはもちろんですが、自分の物件の方が気が楽ですし、ビルを購入した場合には家賃収入も望めます。
また、飲食店経営というものは体力的には非常に大変ですので、自宅兼店舗であれば体が楽というのも店舗を継続しているための秘訣の1つです。

賃貸物件の場合には居抜きを選択しよう

開業の際にはいかに初期投資に伴う借金を少なくするかということがかなり重要です。
このため、できる限り居抜き物件を探して、初期投資をしなくてもすぐに営業に入れるような物件を探しましょう。
飲食店は入れ替わりが激しいため、時間をかけて街を歩いていれば必ず居抜き物件というものは出てきます。
焦らずに、できるか限り初期投資の必要がない物件を探すことも重要です。

売上上昇よりも赤字にならないことを考える

売上を拡大することは簡単ではありませんし、いくら広告費をかけても爆発的に売上が上昇することはほとんどありません。
飲食店は口コミが最も効果的な宣伝ですので売上が上昇するまでにはある程度の時間がかかり、だからこそ老舗は強いのです。
このため、広告費にお金を不要にかけて売上上昇を狙うよりも、光熱費の削減や無駄な在庫をなくして赤字にならないことを第一に考えるべきです。
また、広告費にお金をかけるのであれば、手が空いている従業員にビラや割引券を街で配ってもらうなどの方が効果は高いと言えます。
最初はとにかく経費をかけずに店舗を維持していくことを最優先に考えるようにしてください。

格好つけて人を雇いすぎない

飲食店は従業員が多い方が格好もつきますし、経営者としても人が多い方が楽しいものです。
しかし、最初から格好つけてスタッフを多く雇いすぎることも失敗の原因です。
人件費というものはお客さんがきてもこなくても発生するものですので、どのくらいの売上があるのか分からない開業間もなくの段階で人を抱えすぎることは営業赤字の最も大きな原因となってしまいます。
最初はお客さんをある程度待たせても仕方ないくらいの気持ちで必要最小限の人員で回して、売上が安定してきた段階で人を雇うようにしましょう。
最初のうちは経営者が全て1人で仕事をするくらいの覚悟が必要です。

運転資金は借りない

先ほど述べたように、運転資金が足りないからといって運転資金の借金をすることは絶対にやめた方がよいでしょう。
店舗の経営をより苦しくするだけです。
銀行員は、運転資金を融資する飲食店に対して「借りるくらいならやめたほうが良いのにな」と考えて融資をしています。
店舗の拡大に伴う増加運転資金などでもない限りは運転資金の融資を受けることは絶対にやめた方が良いでしょう。
毎月数万円の赤字は新聞配達などのバイトで稼ぐくらいの気概が必要です。

多様な販売チャネルを持つ

単純に考えて日本は生産年齢人口がどんどん減っています。
特に地方都市ではなおさらです。
それに加えて飲食業界は新規参入の激しい業態です。
また、1店舗で多くの利益を出すことはよほどの行列店でもない限りかなり難しい業種です。
このため、多様な販売チャネルを持ち複数の窓口から薄く広く利益をあげることができる構造を作りましょう。
この点に関しては後述します。

成功モデルに乗っかる

脱サラしても、大手チェーン店のFCで経営している飲食店は比較的長く経営ができていると言えます。
大手チェーンは名前だけで老舗を同じようにすでに市場へ浸透しています。
また、本部の方で市場調査もある程度行ってくれますので、売上の予測が立ちやすくなります。
また、顧客がどのくらいでメニューに飽きてしまうかということも把握しているため、新メニューの開発も定期的に行ってくれます。
その分ロイヤリティーなどが発生し、大きく儲けることはできませんので、夢はないかもしれませんが、ローリスクで起業ができる方法の1つと言えます。

 

飲食店の販売チャネルとは?

1店舗で多くの利益を期待することができない飲食店では多様な販売チャネルを持つことが重要です。

1店舗で大きく儲けることは至難の業

先ほどから述べているように、1店舗で大きく儲けることができる飲食店は、いわゆる行列のできる店だけです。
空席がいつもあるような店舗では1店舗ではオーナーの生活費をギリギリ稼げるかどうかです。

多店舗化

飲食店がある程度の規模になるとすぐに多店舗化するのは1店舗あたりの利益が薄いためです。
このため、1店舗の経営である程度の資金が貯まったら2店舗目を考えるのも1つの方法です。
この際には、1店舗目と異なる形式の店舗の方が良いでしょう。
1店舗目が駅前での出店であれば、2店舗目はファミリー向けの郊外型などというように、異なる客層を狙うことで、複数の販売チャネルを持つことに繋がります。

ネット販売

筆者が最も自分の店舗経営で力を入れているのがネット販売です。
ネット販売は飲食店が抱える以下の問題をクリアすることができる点が大きな特徴です。
①初期投資がかからない
②地域の人口構成などに左右されない(地方でも都会と同じ土壌で勝負ができる)
③顧客に自分から営業がかけられる
飲食店の最大の難点は初期投資の高さと、人件費の高さです。
しかし、ネット販売であればこれらの難点を克服することができます。
また、ネット販売の利点は顧客の住所と氏名を手にいれることができるという点です。
店舗に来る人は顔なじみになることはあっても住所や氏名などを入手することは困難です。
ネット販売を拡充していけば、顧客リストを作ることができ、そこに対して、メールやハガキなどでセールの告知や新商品の販売や割引券の発行などを簡単に行うことができます。
もともと、自店の顧客ですので、新聞や雑誌やネットなどに広告を出すよりもよほど安価にピンポイントで広告を打つことが可能です。
筆者の店舗はこの方法でネットでの売上を拡大し、今や売上の3割〜半分くらいはネットによる販売となり、店舗でただお客を待つということから解放され、店舗経営をかなり楽にすることができるようになりました。

飲食店最大の弱点は「ただ顧客を待つこと」そして顧客が来たら来たで従業員の労力は大変です。
さらに、いつもお店が混むとは限らないため、忙しいときに備えて多くの従業員を抱えていると人件費は高騰します。
このリスクを回避するためには、多様な販売チャネルを持つことが非常に重要なのです。

 

まとめ

飲食店の開業を検討している人へのまとめです。
①初期投資の借金はできるだけしない
②損益分岐点を計算する
③運転資金の借金はしない
④見栄を張って過剰な人員を抱えない
⑤店舗探しは焦らずに、できるだけ居抜き物件を探す
⑥できる限り複数の販売チャネルを持つ

筆者も飲食店のオーナーをしていますが、正直、開業初年はかなり儲かります。
しかし、2年目には売上は激減するものです。
3年目で落ち着き、4年目から地域に浸透するようになり、利益も少しずつ安定していくようになります。
約半数の飲食店が開業後2年程度で廃業しているのが実態ですが、2年程度で儲けることができるようになるほど市場は甘くありません。
やはり丸3年はかけないと浸透しません。
多くの飲食店が浸透する前に資金的苦しくなって撤退していますが、これは開業時の売上の見込みが希望的観測にすぎないために、過剰な借金や人員を抱えた結果として起こることです。
開業後2年〜3年は自分の給料は出ないくらいのつもりで、十分な自己資金をもち、中長期的な経営を心がけ、まずは店舗の存続を第一に考えた方が無難です。

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